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中国とインドが、第三次世界大戦の引き金を引く!!かつてないほど「アジア」が、緊張している!!

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中国とインドが、第三次世界大戦の引き金を引く!!かつてないほど「アジア」が、緊張している!!
中国とインドがかつてない軍事緊張関係

JBpressより

インドの首都ニューデリーで、中印の国境をめぐる対立を受け、中国大使館の前で抗議する活動家ら(2017年7月7日撮影、資料写真)。

インドの首都ニューデリーで、中印の国境をめぐる対立を受け、中国大使館の前で抗議する活動家ら

(2017年7月7日撮影、資料写真)。

 「国家は戦争をしない」と考える人は多いのではないだろうか。戦争をしない方が賢く見える要因がたくさんあるからだ。

 例えば、核兵器を保有する国同士が戦争をすれば、利益に見合わない大きな損害が出る。昨今の経済的な相互依存関係から見ても同じだ。だから損得計算からして戦争に踏み切るような決断はあり得ない。

 しかし、このような意見は第2次世界大戦のような大戦争には適用できても、より小規模な戦争にも適用できるのだろうか。また、英国がEUから離脱したような、経済合理性からは説明しにくい事態が起きる可能性はどうだろうか。

 より細かな想定をしていくと、国家間で本当に戦争は起きないのか、疑問に思えてくる。

 最近、インドと中国の国境地帯(厳密には「実効支配線」)で起きている両軍のにらみ合いも、戦争に至る可能性のある危機なのかもしれない。きっかけは、中国がブータンと領有権争いを行っている地域で、中国軍が道路建設を行ったことだ。

 ブータンの安全保障を担うインドが阻止に入り、印中両軍がにらみ合い、次第に兵力を増強しながら、6月半ば以降1か月以上にらみ合っている。

 このような国境地帯における侵入事件そのものは小規模なものも含めると年間300件以上あり、ほぼ毎日だ。そのうち、少し規模の大きなにらみ合いが起きるのも、年平均2回程度ある。

 しかし、今回は若干、様相が異なる。

 中国軍の報道官が「過去の教訓(1962年の戦争でインドが中国に敗北した件)」から学ぶよう言及し、中国政府は、インド軍が撤退しない限り「交渉しない」と言及し、中国メディアも「外交以外の手段(戦争を指す)」を選択すると連日報道している。

 中国は「孫子の兵法」の国である。「孫子の兵法」では、戦争をするときは密かに準備し、奇襲を狙う。戦争をすると公言しているときは、戦争しない傾向がある。だから、そこから考えれば、今回、戦争になる確率は低い。

 しかし、過去に中国がインドに対して仕かけた軍事行動を分析すると、インドが中国に限定的ではあるが、軍事的な攻撃を仕かけてもおかしくない状況がある。そして中国がインドを攻撃するような事態になれば、日本も立場を決めざるを得なくなるだろう。

 そこで、本稿は、印中国境で何が起きているか、過去の事例を含め分析し、本当にインドと中国が交戦状態に入ったとき、日本がどうするべきか考察することにした。

1.国境地帯で何が起きているのか

 今、インドと中国の国境地帯で何が起きているのだろうか。ことの発端は、中国がチベット地域で行っている道路建設が、中国とブータンと領有権問題で争っている地域にまで伸びてきたことだ。

 結果、ブータンの安全保障を担うインドが兵を送り、これを阻止しようと立ちふさがった。

 中国側に言わせれば、インドの兵士が「中国の領土」に勝手に「侵入してきた」ことになる。そこでインドが兵を引かない限り、交渉しない、戦争に打って出る可能性もあると強調し始めたのである。

 上述の通りこのようなインドと中国の国境警備当局のにらみ合いは頻繁にある。しかし、今回はいくつかの点で以前にはない特徴がある。

 まず、中国側が明確に戦争をちらつかせていることだ。最近、中国は尖閣諸島、津軽海峡、鹿児島県沖など日本の領海に軍艦を侵入させているし、南シナ海でも埋め立てて7か所の人工島を造り、その上に武器を配置し、3つの軍用滑走路も建設している。

 しかし、これまで中国は、戦争や軍事目的であることを強調しないようにする傾向があった。

 ところが、今回のインドに対する事例では、1962年に両国が戦争に至り、中国が勝利したことを中国軍の報道官が明確に引用し、中国メディアも戦争にかかわるメッセージを頻繁に引用して、積極的に戦争をちらつかせている。

 実際、今回中国が建設している道路は、重量が40トンの大型車両の走行に耐えるものであるが、これは中国がチベットで実験を繰り返している新型戦車の走行に耐えるもので軍事目的に使用できる道路である。その点がこれまでと大きく違う。

 また、今回の地域は、インド側にとって軍事的な重要地域であることも特徴だ。

 地図を見ると分かるが、インドは大きく2つの地域、インド「本土」と北東部に分かれていて、その2つの地域は、ネパール、ブータン、バングラデシュに挟まれた鶴の首のような細い領土でつながっている。

 この細い部分は最も狭いところで幅17キロしかない。東京から横浜でも27キロ程度あるからとても狭い地域だ。この部分を攻められると、インド北東部全域がインド「本土」から切り離されてしまう安全保障上の弱点になっている。

 そのため、インドはブータンと協定を結んで、ブータンにインド軍を駐留させて守ってきた。

 1971年の第3次印パ戦争で、東パキスタンを攻め、バングラデシュを建国したのも、この安全保障上の弱点を克服することが目的の1つである。1975年にシッキム藩王国の民主化運動を支援し、結局はインドへの併合へと至ったのも、この安全保障の弱点を克服するためであった。

 今回、中国はこのようにインドにとって安全保障上重要な地域で、中国の戦車が移動できる道路を建設しているわけだ。そして、インドがこれを阻止しようとすると戦争をちらつかせて脅しをかけていることになる。大変強硬な姿勢だ。

図1:位置関係地図(筆者作成)

2.ミリタリーバランスは中国に有利

(1)中国側の動き

 このように中国がインドに対して脅しをしかける背景には、中国の方が軍事的に有利な現実がある。その根拠は、地形、インフラ、周辺国への影響力の3つである。

 中国が地形的に有利なのは、標高が高いからである。標高が高いところから低いところに攻めて行くときは、上から下を見るから全体を見渡してどこに向けて大砲を撃つべきか、分かりやすい。

 坂を駆け下るから攻めやすいこともある。弾薬やその他の補給品、重量物も運びやすい。しかも、もともと標高の高いところの空気に慣れている側は、高山病を克服できる。逆に、低いところから高いところへ攻めて行くインドはすべてで不利なのだ。

 そして、中国のチベット地域では、インフラ建設によって、さらに中国側に有利な状況を作りつつある。鉄道や道路網、トンネルが建設され、飛行場が増設されつつある。

 当初これらのプロジェクトは、江沢民が中国の国家主席だった時代の「西部大開発」計画としてスタートし、民生用のプロジェクトであったが、インフラ建設に伴い中国軍の移動も容易になった。その結果、中国軍の展開が活発になり始めたのである。

 国境地帯における中国側からインド側への侵入事件は、2011年は213件であったが、2012年は426件、2013年は411件、2014年は460件と上昇してきた。

 2015年10月に南シナ海で航行の自由作戦が始まる時期と同じくして数が減り、2015年は360件になったが、2011年に比べればまだ多い状況が続いている。中国は、戦闘機や弾道ミサイルの配備も積極的に進めている。

 さらに、中国は印中国境防衛にかかわる周辺国、パキスタン、ネパール、バングラデシュなどでも影響力を拡大させている。周辺国への政策もインフラ建設や軍事力の展開がメインだ。

 特にパキスタンへは「一帯一路」構想の一部「中国パキスタン経済回廊」構想に基づいて、印パ間で領有権を争っているカシミールで道路建設を行い、パキスタン軍との共同国境パトロールなども実施している。

 パキスタンへの武器の輸出は顕著で、インドは特に中パ間で共同開発した「JF-17戦闘機」を懸念している。

 ネパールへも道路を延伸し、武器を密輸している(インドとの協定でネパールはインドの許可を得ない限り武器を輸入できないことになっているから、中国からの輸入は密輸にあたる)。

 そしてバングラデシュに対しても、港湾建設や武器輸出などを通じて影響力を行使し始めている。

 武器は高度なのに乱暴に扱うからすぐ壊れ、修理や弾薬・修理部品の供給に依存する。中国製の武器を輸入するということは、中国に依存することを意味する。これら周辺国で中国製の武器が増えていることは、中国の影響力が増していることを示しているのだ。

(2)インドの対抗策

 そこでインド側も対処しようとしてきた。インフラを建設し、軍を再配置し、周辺国対策を進めようとしたのだ。印中国境地帯では、1997年に73本の道路が必要と判断し、そのうち61本の道路を2012年までに造ることにした。鉄道14本も計画した。

 軍の再配置も進め、戦車部隊、多連装ロケット部隊、巡航ミサイル、「Su-30戦闘機」の配備を進めている。その中で特に目玉となるのは新しい第17軍団の創設だ。

 この軍団は、中国よりも標高が低いという地形的に不利な状況を克服するために作られた。実はインドは過去、標高の高い所にいる敵と戦ったことがある。1999年の印パ間のカルギル危機だ。

 この時、インドは山の頂上に陣取る敵に対して攻撃することがとても困難で、敵の9倍の戦力で攻撃しないと勝てないことを知った。また、標高の高い所にいる敵を攻撃するためには、まず敵の補給を断つことが重要なことも再認識した。

 そこで第17軍団を創設することにしたのだ。第17軍団は空中機動軍団。敵が攻めて来れば、輸送機に乗って敵を飛び越え、敵の後方、より標高の高いチベットへ攻め込む。そして、敵の背後にある補給拠点を攻撃して敵を弱らせる。最後は、他の味方と連携しながら領土を奪回するのである。

図2:インドの陸軍師団配置図(赤い矢印が第17軍団、拙稿『検証 インドの軍事戦略―緊張する周辺国とのパワーバランス』(ミネルヴァ書房、2015年)251ページより更新):

インドの陸軍師団配置図(赤い矢印が第17軍団、拙稿『検証…

:インド空軍戦闘飛行隊配置図(ミグ21を除く、拙稿『検証…

 この第17軍団の構想を実現するには、多くの装備が必要だ。そこでインドは米国と協力している。第17軍団関連の装備では、大型輸送機、中型輸送機、大型輸送ヘリ、攻撃ヘリ、空輸可能な超軽量砲など、米国製の比率が非常に高い。

 さらに、インドは、周辺国対策も進めている。インフラ建設の支援と共に、武器輸入への影響力を狙った構想だ。

 例えば2017年に、バングラデシュが購入する武器の費用500億円をインドが肩代わりする協定を締結したのは、その一例だ。バングラデシュは、この資金で、中国製の戦闘機ではなくロシア製の戦闘機を購入することを検討している。

 もしバングラデシュがロシア製の戦闘機を購入すれば、インドもロシア製の戦闘機を使っているから、整備や訓練などの面で、インドがバングラデシュ空軍の維持管理にかかわることが可能で、インドのバングラデシュへの影響力を維持することが可能になる。

 これらの構想は、みな一定の進展がみられている。しかし、問題はその実現速度だ。例えば、インドの道路建設は、2012年までに73本中61本完成している計画だったはずだった。

 ところが実際には、2017年3月までに24本しか完成していない。第17軍団はすでに編成され、人員も揃ったのに予算が十分ではなく、規模を縮小するべきかの議論が行われている。

 周辺国への武器購入資金援助のプログラムはまだ始まったばかりで、どの程度中国の影響力を抑えることができるかまだ分からない。その結果、インドと中国の国境防衛能力には差が出てきた。

 インド軍と中国軍が国境まで一斉に競走した場合、中国軍は2日で到達し、インド軍は7日かかる見通しだ。中国はこのようなミリタリーバランスの状況を見て、今回のような挑発的な行動に出ているのである。

3.過去の事例からみた中国の真の目的

 しかし、もし中国が本当にインドを攻撃するとしたら、どのような目的があるのだろうか。領土が欲しいのだろうか。

 過去の中国の行動にそのヒントが隠されている。過去、中国がインドに対して攻撃的な軍事行動を行ったことは、少なくとも3回ある。1962年の印中戦争、1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件、1986~87年に起きた危機である。

 これらの3つの軍事行動の目的は何だったのだろうか。

 これらの3つの事件はすべて領土紛争を原因として発生しているのは確かだ。1962年の印中戦争では、西はカシミール、東はアルナチャル・プラデシュ州(中国名:南チベット)まで、インド中国双方が自国領だと主張しているところで戦った。

 1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件においても、印中両国の境界を示す国境フェンスの建設において、わずか30センチの土地がどちらに帰属するかをめぐって5日間にわたり交戦した。

 1986~87年の危機も発端は、中国軍がインド側のスムドロング・チュ(印中両方が領有権を主張するアルナチャル・プラデシュ州とブータンの接合点)へ侵入したことがきっかけであった。

 しかし、このような一見して領土紛争に見える3つの戦闘の真の目的は、領土でなかった可能性が高い。

 1962年の印中戦争においては、中国軍が圧倒的に有利な戦闘を展開していたにもかかわらず、自国領と主張していた領土のかなりの部分から一方的に撤退し、結局ほとんどがインド領になってしまった。

 1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件においても、戦闘は中国側有利だったにもかかわらず、中国軍が一方的に撤退したため、やはりインド領になった。

 1986年中国軍の侵入については、インド軍が1個旅団派遣するファルコン作戦を実施、さらに全土で対中国演習を行うチェッカーボード演習を計画し、それに驚いた米ソが仲介に乗り出し、中国側は領土を取るどころか、インドとの関係改善を迫られる結果になった。

 つまり、中国側のインドに対する軍事行動は、領土紛争を理由にして起きているものの、実際には、本気で領土を確保しようとしてない。

 そもそも、中国とインドが争っている領土は、あまり魅力的な領土ではない。

 標高は5000メートル以上もあり、人はほとんど住んでおらず、開発も進んでいない。水以外の資源も特に見つかっていない。自然がとてもきれいなだけである。

 奪い取ることにどれほどの意味があるか分からない土地だ。だから、中国が、このような価値のない領土をめぐって攻撃を仕かけたことの方が不思議なのである。別の真の理由があったとみる方が自然だ。

 では何が真の理由だったのだろうか。

 もし中国にとっての利益は、より外交上の成果を狙ったものだと仮定すると、以下の説明が可能になる。

 例えば1962年の印中戦争は、米ソのどちらでもない非同盟諸国のグループにおいて、中国とインド、どちらが主導権を取るかの争いだった可能性がある。実際、印中戦争の後、非同盟諸国の間でインドはリーダー格には見られなくなり、中国との協力関係を強化する動きが続いた。

 1967年のナトゥラ事件・チョーラ事件においては、共産圏において中国とソ連のどちらが主導権を取るか、争っていたものとみることができる。

 当時、ソ連は、第2次印パ戦争の仲介役として印パ両国の停戦を実現し、存在感を示し始めていた。もともとインドに対する影響力の強いソ連が、パキスタンでも影響力を増すとなると、中国のパキスタンに対する影響力は低下していく。

 そのことを懸念した中国は、インドを攻撃することにした。中国がインドを攻撃すれば、ソ連はインド支持を、パキスタンは中国支持を明確にせざるを得なくなる。結果、ソ連とパキスタンの関係は悪化し、中国はパキスタンへの影響力を維持できる、というわけである。

 1986~87年の危機についても、米中とソ連が争う世界的な構図の中で、中国がパキスタンへの影響力を維持しようとした可能性がある(各国の位置関係は図1参照)。

 当時、ソ連はアフガニスタンに侵攻しており、米国はパキスタンを通じてアフガニスタンのゲリラを援助していた。そこで、ソ連はインドに軍事支援する代わりに、パキスタンを攻撃してアフガニスタンのゲリラへの支援ルートを遮断するような作戦を要求した。

 実際、インドはソ連からの軍事援助を受けて戦力を近代化し、パキスタン攻撃を念頭に置いた大演習を準備した(「ブラスタクス演習」として実施)。

 これを見ていたパキスタンの同盟国である中国は、スムドロング・チュへの侵入事件を起こして、インド軍を自分の方に引きつけ、パキスタンとアフガニスタンのゲリラ支援ルートを救おうとしたのである。それによって、中国のパキスタンに対する影響力を保持するのが狙いだ。

 つまり、過去の3回の事例を見れば、中国がインドに対して軍事行動を取るときには外交的な目的がある可能性が高い。では、現代の中国にとって、インドを攻撃する真の目的はあるのだろうか。

 6月半ばから続いているインドと中国のにらみ合いの原因が、中国とインドではなく、中国とブータンの間で起きた領土問題に起因することは注目に値する。

 もしインドが中国の要求しているように兵を引けばどうなるか。ブータンは、インドはブータンを守ってくれないと考えて、インドのブータンに対する影響力が落ちることになる。

 インドが譲歩すれば、ブータンだけでなく、ネパールやバングラデシュ、スリランカ、モルディブ、ミャンマーなどのインドの周辺国からみて、インドは弱い国として見られる可能性がある。

 つまり、中国の軍事行動の真の目的には、他の周辺国に対して、インドと中国、どちらが影響力を有するか、争っている側面がある。

 中国は「強い」リーダー的存在の国であり、インドは「弱い」国であると証明したい。これは過去3回起きてきたことによく似ている。

 しかも、中国から見れば、インドのナレンドラ・モディ政権の政策は、挑戦的である。例えばインド海軍の艦艇は、かつては、日本に寄港すると中国にも寄港していた。ところがモディ政権成立の1か月前を最後に中国へ寄港しなくなった。

 モディ政権になってからのインド海軍の艦艇は、日本、ロシア、韓国、フィリピン、ベトナム、マレーシア、ブルネイ、シンガポール、インドネシア、オーストラリア、米国(ハワイ)などの国々へ寄港したり、共同演習している。

 これだけ訪問しているのに中国に訪問していないのは、インドのモディ政権が、中国軍のインド洋進出を不愉快に思っていることを示す明確なメッセージとなっている。中国から見れば、挑戦的だ。

 さらに、2017年4月には、中国が領有権を主張するインドのアルナチャル・プラデシュ州(中国名:南チベット)へのダライ・ラマの訪問を許可した。6月には、中国で行われた「一帯一路」サミットへのインド代表参加の招待を断っただけでなく、「一帯一路」構想に対する明確な反対の公式声明を出した。

 そこには、インドが領有権を主張するカシミールで中国軍が道路建設を行っていることへの不満や、援助される各国の現地の事情を顧みずに援助漬けにする中国のプロジェクトの在り方への批判が書かれている*1。

 そしてその直後に、日本と共に「アジア・アフリカ経済回廊」構想を打ち出し、日印主導の援助外交によって、中国への対抗心を明確に示している。

 中国から見ると、これらのインドの行動は、中国がリーダー的な存在であることを否定する挑戦的な姿勢である。だから、過去3回の軍事行動と同じように、中国の影響力を示す手段として軍事的な攻撃を選択することがあっても、不思議ではない。

4.インドはエスカレーションで対抗する可能性

 インドはどう対応するだろうか。6月から続くインドと中国との国境警備当局のにらみ合いでは、インドは非常に抑えた対応をしている。

 中国側が1962年の戦争を引き合いに出して、インドが兵を引かない限り交渉もしないと、繰り返し述べているのに対し、インド側はほとんど沈黙を守っている。インドは落ち着いて対応している。

 もしこのまま中国側が攻撃に出なければ、事態はエスカレートしないで収まっていくかもしれない。

 しかし、にらみ合いが行われている場所の背後ではインドも中国も軍を準備させており、攻撃が行われた時の備えをしている。もし本当に中国がインドを攻撃するようなことがあったら、インドはどうするだろうか。それには、まず、中国がどのような攻撃をするか考えなくてはならない。

 もし中国が、インドを攻撃することを想定した場合、過去の1962年、1967年、1986年の例をみてみれば、中国の軍事行動は限定されたものになる可能性がある。

 例えば1962年に起きたことは、中国の陸軍は攻撃を仕かけたが、空軍は爆撃などに従事していない。

 1967年の戦闘も陸軍だけで、ナトゥナ峠、チョーラ峠周辺に限定されていた。1986年の事例に至っては、中国は侵入しただけで攻撃を行っていない。

 これには中国側の合理的な理由がある。まず、中国が、インドよりも「強い」ことを示すだけのために攻撃をすることを想定した場合、大きな戦争をする必要はない。

 次に、標高が高い方が有利というのは、陸上戦の場合だ。もし空軍を投入していれば、飛行場が標高の高い地域にある中国の飛行場では空気が薄いため、戦闘機は十分な揚力を得られず、多くの燃料や武器が積めない。

 空軍を投入せず、陸上戦だけに限定した方が、中国にとって有利なのだ。さらに、もし中国が大規模な攻撃をした場合、米国やロシアが仲介に乗り出し、圧力をかけてくる可能性が高い。

 米国やロシアは先に攻撃した中国よりもインドを支持する可能性が高い。だから、もし中国がインドを攻撃するならば、陸上戦だけに限定し、核危機になりそうな大規模な作戦にならないよう、地域も限定的に抑えておいた方がいい。

 ところが、インドから見ると、その部分が中国の弱点になる。

 インドは、限定的な戦争を志向する代わりにエスカレートさせるかもしれない。例えば、陸上戦に限らず空軍を投入すれば、インドは戦局を挽回できるかもしれない。

 インドの空軍機は標高が低い地域の飛行場から離陸する。多くの燃料やミサイルを積めることになる。現代の戦闘機は同じ時間で複数の敵と戦えるから、燃料やミサイルを多く積めるインドの戦闘機は、中国に比べ数が劣っていても、数の劣勢を補って善戦する可能性がある。

 また、インドは、核戦争の危機を演出して、米国やロシアの外交的な介入をしてくるよう、促すこともできる。

 さらに、中国軍が有利に戦っている場所とは別の場所で攻撃に出て、うまくいけば、インドが失った領土と、インドが奪い取った領土を交換する取引を狙う可能性もある。

 空軍の投入、核危機の雰囲気を利用すること、別の場所へ戦線を拡大し取引を狙う方法、これら3つの方法は、実はインドは過去に実際実施したことがある方法だ。

 1999年に印パ間で起きたカルギル危機の際は、山岳戦で、インドは空軍の投入を決めた。その時、1998年に両国は核実験をしたばかりだったので、核戦争を危惧する米国は急ぎ仲介に乗り出した。

 米国の介入は、インドへの攻撃を仕かけたパキスタン側に厳しく、インド側に立ったものになった。

 また、別の事例であるが、1965年の印パ戦争時には、カシミールでの戦局が悪かったため、パンジャブ州で攻撃に出て、戦後、印パで奪い取った領土の交換を実施したこともある。

5.日本は備えなければならない

 以上をまとめると中国は、ブータンなどの第三国に自らの影響力を認めさせるために、インドに軍事的な圧力をかける場合があり、それは場合によっては、限定的な軍事攻撃に至ることも考えられる。

 その場合、インドは事態を収めようとよりも、エスカレートさせて対応する可能性も考えられる。

 では、このような事態に日本はどうするべきだろうか。

 実は、印中国境の問題は日本の安全保障に深くかかわっている。中国がインドとの国境紛争に多くの資金や戦力を割けば、中国が日本に対して使う資金や戦力は少なくなる可能性があるからだ(例えば日本正面に配置していた戦闘機やミサイルの部隊を、インド正面に配置しなおすことなどが考えられる)。

 中国は国防費全体の4分の1を印中国境方面に投じているものとみられている。そのため、日本がインドの国境防衛力強化に協力して、中国により多くの国防費をインド側で使うように仕向けることは、日本にとって有用となる。

 その際にどう協力するのか。危機に至る前の平時の協力と、危機になってからの協力と2つの方法が両方必要だと考えられる。

 危機が起きる前にインドへの協力としては、例えば、インドの国境防衛力を向上させるために、インド側が必要としている道路網、鉄道網、橋、トンネル、空港、ヘリパッドなどの建設が考えられる。

 これは、民生用のプロジェクトとして実施可能なもので、実際、日本はインド北東部地域で道路建設に従事する権利を得た唯一の外国である。積極的に機会を利用すべきである。

 また、防衛技術協力、防衛装備品の輸出も積極的に進めるべきである。すでに米国は第17軍団の装備を供給して協力しているが、日印間ではレーダー網の構築などで協力する余地があるだろう。

 また国境地域を衛星を使って宇宙から監視する能力は、インドもかなり進んでいるので、日本とインド、米国との間で学び合う関係ができるはずだ。

 一方、実際に危機が起きた場合においては、より即効性のある対応が必要となる。例えば3つのことが考えられる。

 まず、インド支持の声明を出して立場を明確にする方法がある。米空母派遣が行われるようであれば(1962年の印中戦争のときは、インド支援のために米国は空母を派遣した)、それに合わせ、海上自衛隊のヘリ空母「いずも」「かが」のインド洋派遣など、目に見える支援を行う方法もある(実際、今回の危機の最中、「いずも」はインド洋で日米印共同演習を実施した)。

 さらに、尖閣周辺に自衛隊を展開させることや、南シナ海で米国が行う「航行の自由作戦」へ自衛隊を参加させるなどして、中国軍を印中国境から東シナ海や南シナ海方面へ再展開させるよう仕向ける方法も考えられる。

 インドが中国との「戦争」に負けて、中国対策で日本に協力しなくなると、日本の対中安全保障は大きな打撃を受ける。

 逆に、インドが日本に感謝して日本との関係を強化する方向に進めば、日本にとって印中の危機はチャンスとなる。

 最近シンガポールで講演したインドの外務次官は、日本とベトナムとの関係強化を打ち出した。日本は危機をチャンスに変えられるよう、平時、非常時両方について、インドへの支援を準備しておく必要がある。

以上

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